『スコシの領分』『闇憑きのハコベ』『探求中毒』の三編から成り、既刊『水に咲く花』と繋がりを持っている。
『スコシの領分』。
奇病を鎮めるため冥府の女王に謁見する――生贄となる少女の旅。
祖母も、父も、母も、何かが「欠け」、何かが「足りない」と揶揄される。
そうした血族にあって、スコシは自身にも「欠落感」を抱く。
どれだけの揶揄が、誹謗が、中傷が、この一族に注がれたか。
そしてスコシに生贄となることを決心させることになったものは、あまりにも切なく。
完璧な人間などいない。
皆何かしら「欠けて」いる。
「他人に全部おっかぶせて、みんなのためだなんだって……そんなことをぬけぬけといえるあんたらの方が、あたしにしたらよっぽど欠けてる」
母のこの言葉が、胸に突き刺さる。
この声が、聞こえるか。
完璧な人間などいない。
――そんなことは誰だって知っているのだろう。
だが、ほんの少しのことで人は人を嘲り、罵り、侮り、「欠落」していると烙印を押す。
だけど、そんな世界は、悲しいだけだ。
スコシはそんな世界を、優しく、ただ優しく眺め――戦慄し、涙を押し殺しているが――、最後まで村人と幼馴染のことを気にかける。
その優しさが、ただただ、愛おしく、切ない。
『闇憑きのハコベ』は冒頭の文章が『水に咲く花』の記憶を一気に――怒涛のように思い出させ、どこか懐かしく思い起こされた。
人を殺すということ、人を愛するということ、人に愛されるということ。
闇憑きのハコベをどうにかしようと足掻く「才のない」祈祷師のじりじりする様。
そして死してなお師匠の、弟子を想う気持ち。
愛情が、胸を突いた。
男同士の友情(というか、師匠と弟子だから師弟愛?)、いいもんだなぁ。
『探求中毒』
これは『水に咲く花』『闇憑きのハコベ』から大分時間が経っているが、祈祷師の犯した罪の、その最後の顛末が描かれている。
とても面白かった!
サークル名:下町飲酒会 駄文支部
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