2012年05月16日

日野裕太郎『水影に赤をきく』感想

『水影に赤をきく』
日野裕太郎
サークル名:下町飲酒会 駄文支部
2011/05/05 コミティア100発行
第十四回文学フリマで購入

『水影に赤をきく』と『見えない手と手をつないできみと』の二編収録。

『水影に赤をきく』
男は姉のせいで全てを失った。
閉鎖的なムラでは男の家族は唾棄され、追い詰められ、追い込まれる。
姉への怒りを抱えながら、一方で思慕を捨てられないでいる。
家族を守るため、無表情に殺戮を繰り返す男の目の前に現れた……恋人達。

「それでも……幸せになれると思っているのか」

男が恋人達に見たのは希望なのか。それとも家族の長として強いられた諦念なのか。

俺が信じたいのは希望。


『見えない手と手をつないできみと』
洪水によってムラを、故郷を、両親を失った少年。
姉妹とともに取り残された兄弟たちは、生きるために諦めることを知った。
諦め、諦め、諦めて、そこに何が残る?
成長した少年の前に現れた懐かしい匂い。
その意味に戸惑い、目を背け、だが忘れられぬ想い。
出会った希望に、清涼な読後感を感じた。
posted by 桜井夕也 at 21:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 文学フリマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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